日本各地で大雨の報道があると、必ず映されるのが水没車。
被害に遭われた方はお気の毒ですが、他人事ではありません。
異常気象が続く中、水没の危険性はつねに身の回りにあると考えた方が賢明。
大雨で車が水没した時の対処法について解説します。
水没車の定義とは?
水没車とは雨水や海水に浸かって走行不能になった車のこと。
水害車や冠水車、水害歴車などとも呼ばれています。
水没車の定義は日本自動車査定協会の査定基準で決められており、以下のようになっています。
・室内フロアよりも上まで浸水した車
・浸水の痕が複数ある車
・その痕跡により商品価値の下落が見込まれる車
この2つの要項を確認するために、以下の2点を調べます。
・通常の使用では発生しない腐食・サビ
・通常の使用では付着しない汚れ・シミ
車が水没すると、一般的にはエンジンもかからず車内には不快な臭いが残ります。
たとえエンジンを修理しても泥水は細部まで入り込み、金属部分を腐食させます。
水没の度合いが軽度でも、水没車と判定されると査定額は大幅に下落。
洪水による被害の場合、任意の車両保険に入っていれば修理費用は補償されます。
修理費用が保険金額を上回った際は全損扱いとなり、設定した金額が支払われます。
ただし、車両保険を利用すると翌年からは1等級ダウン。
さらに事故あり係数適用期間が1年加算されることを覚えておきましょう。
走行可能なのは水位30cmまで
見知らぬ土地で道路が冠水していたら通行に対して慎重になるのは当たり前。
でも普段から使っている道路だったらこれくらいの水位、大丈夫と思うこともあるでしょう。
不確かな目測は水没の危険性につながります。
実際、どの位の水位で水没するのか、JAFが実験を行っています。
水位が30cmの場合、10km/h以上で走行すればセダンやSUVでも走行可能。
水位が60cmになるとセダンは水没、SUVでも30km/hで走行すると水没する結果になりました。
SUVはエンジン位置がセダンより高いので水位が若干高くても走行可能です。
ただし、走行時の注意点としては速度を10km/h程度に落とすこと。
速度を上げると巻き上げる水の領が多くなり、エンジン部分が浸水してしまいます。
水位30cmはだいたい大人のヒザ下ぐらい。
水位が60cmになるとSUVでもドアの中央ぐらいまで上がります。
この時、ドアにかかる水圧は50kg。
大人でもかなりな力が必要ですね。
しかしボンネットから浸水して電気系統が動かなくなればドアロックを解除できません。
水位60cmで水没したら、車の中で身動きできなくなる危険性がとても高くなるのです。
車が水没した時の対処法
水位が30cm程度だからといって安心は禁物。
入水時が30cmでも路面が下り傾斜の場合、水位が60cmに達する場合もあるのです。
万が一、60cm以上の水位に入り込んだらエンジンが動くうちに、すぐにバックしてください。
マフラーから水が入ると排気ができなくなり、エンストします。
下り傾斜でエンジン部分の水位が深くなってもマフラー位置は逆に高くなります。
水が侵入する危険性が低いうちに安全な水位まで退避しましょう。
万が一、水没して車が動かなくなった場合は車から脱出することが最優先。
水没と感じたら、すぐにパワーウインドウを全開にしてください。
たとえエンジンが動かなくなっても、その直後であればパワーウインドウは作動します。
もし、パワーウインドウが動かなくなってしまった場合。
そんな非常時に役立つのが脱出用ハンマーです。
車の窓ガラスは頑丈にできているので、なかなか割れません。
脱出用ハンマーであれば先端が丸くポンチのようになっているので割ることができます。
窓ガラスを割る時は必ずドア側を選んでください。
フロントガラスは合わせガラスになっているため、ヒビが入っても割れにくくなっています。
脱出用にはハンマーの他、シートベルトカッターや消化器がセットになったツールもあります。
いざという時のために、車に常備しておきましょう。
外が濁流の時は車の屋根に登って救助を待つ
脱出用ハンマーがない場合、ヘッドレストが外れるタイプであれば窓ガラスを割れます。
ヘッドレストのパイプ部分を窓ガラスとドアトリムの間に1本差し込みます。
あとはヘッドレスト部分を持って押し下げるだけ。
テコの原理で軽い力でも割ることができます。
窓ガラスを割ったら、タオルなどで手を包み、割れた部分のガラスを取り除いてください。
破片が残っていると、脱出時に身体を傷つけてしまいます。
完全に取り除いたことを確認できたら、窓から脱出。
その際、冠水部分が激しい濁流の場合、外に出るのは危険です。
60cm以上の激しい濁流では歩行が困難になり、最悪、流されてしまいます。
車の屋根に避難して救助を待ちましょう。
冠水しやすい道路は高架下のアンダーパスがよく知られていますが、他にもあります。
海岸に近いゼロメートル地帯や河口付近の三角州、河川の流域なども注意が必要。
河川の氾濫や高潮による車の水没は避けられません。
しかし走行中の水没は危険を察知すれば避けることができます。
車はもちろん大事。
でも、命の方がはるかに大切です。
走行中は冠水路を避け、安全なカーライフを送りましょう。