現代の乗用車で多く用いられているディスクブレーキのうち、ブレーキキャリパーはアルミホイールからのぞき込んで確認することができます。
ディスクブレーキはブレーキダストで汚れやすいという特徴があり、定期的に洗浄しないとホイールとともに真っ黒に汚れてしまいます。
今回はキャリパーを洗浄するメリットはどのようなものがあるのか、洗浄方法と併せて解説します。
ブレーキキャリパーとはどんなパーツか
ブレーキキャリパーはブレーキを構成するパーツのひとつで、ディスクブレーキに装着されているものです。ホイールからブレーキをのぞき込んでみると、ディスクローターをはさむような形状をしているキャリパーを確認することができます。
ディスクブレーキは、タイヤと一緒に回転するディスクローターをブレーキパッドが押さえつけることでお互いを摩擦させ、減速・停止する仕組みになっています。このときブレーキキャリパーが担う役割は、ブレーキパッドの動作を制御するという極めて重要なものです。
ブレーキキャリパーにはどのような汚れが付くのか
キャリパーをはじめとしたブレーキのパーツに付く汚れは一般的に「ブレーキダスト」と呼ばれており、主な成分はブレーキローターから生じる鉄粉です。
ディスクブレーキの仕組みは前項で説明したとおりで、ブレーキパッドとローターが摩擦する際にパッドとローターがわずかに削れます。
パッドの摩擦材はほとんど走行時の空気中に混ざりますが、ローターの鉄粉はそのままキャリパーやホイールにこびりついてブレーキダストになります。
輸入車のブレーキは国産車よりもブレーキダストが発生しやすいと言われており、ブレーキに対する考え方が異なることに起因します。
輸入車のブレーキは、パッドを交換する際ローターも同時に交換して制動力を保つ、という前提で開発されるという点が特徴です。ローターの減りが激しいため、発生するブレーキダストの量も多くなります。
それに対し国産車では、パッドと同頻度のローター交換が想定されていません。ローターは輸入車よりも摩耗しづらくなっているため、発生するブレーキダストも少なくなる、ということです。
ブレーキキャリパーを洗浄するメリットは
ブレーキキャリパーの洗浄といっても、見える部分のブレーキダストを落とすだけの洗浄から分解清掃とも呼ばれるオーバーホールまで、定義の範囲は幅広くなっています。
特にオーバーホールは部品単位まで分解するため、早い段階で異常を発見することができるという点が最大のメリットです。
車を減速・停止させるブレーキの役割は極めて大きく、エンジンやサスペンションといった走行に関する性能以上にシビアな性能が要求されます。
そのためブレーキは機能しないと事故に直結する「重要保安部品」に位置付けられており、その構成要素であるキャリパーの洗浄も、確実な制動力を保つためには欠かせないメンテナンスです。
洗浄による直接のメリットではありませんが、ブレーキを分解する際「鳴き」の原因を知ることも可能です。ブレーキの鳴きが当たり前の輸入車にはあてはまらないのですが、国産車のブレーキが鳴く場合は、パッドやローターの摩耗が進んでいるという証拠です。。
ブレーキの鳴きが気になってきたら、早めにブレーキの状態をチェックするか、自分でのチェックに自信がない場合は点検を依頼しましょう。
ブレーキキャリパーを洗浄できる人は限られている
ブレーキキャリパーの外から水で洗浄することは誰でもできますが、オーバーホールで洗浄することができるのは自動車整備士の有資格者に限られます。
道路運送車両法第七十八条では、「自動車分解整備事業を経営しようとする者は…分解整備を行う事業場ごとに、地方運輸局長の認証を受けなければならない」と規定されています。そのため有資格者であっても、ブレーキの分解整備は認証工場内でしか行えません。
一方で、道路運送車両法第四十七条では次のように定められています。
「「自動車の使用者は、自動車の点検をし、及び必要に応じ整備をすることにより、当該自動車を保安基準に適合するように維持しなければならない」
つまりオーナー自らが整備することは禁止されておらず、ブレーキのオーバーホールも法令上は許されています。
しかしブレーキトラブルは命に直結するため、エンジン以上に繊細な扱いが求められます。洗車機の流水で落とせないキャリパーの汚れは、点検も兼ねてプロに任せた方がよいのではないでしょうか。
まとめ
ブレーキは重要保安部品のひとつとして、走る以上に重要な止まるという役割を担います。
ブレーキの構成パーツであるキャリパーは汚れやすいという特徴がありますが、分解を伴う大がかりなオーバーホールは素人では困難です。
洗車サービスを提供するプロの中には整備士資格を持つスタッフもおり、必要に応じてブレーキの分解整備に対応してもらえる場合があります。
流水で洗い流す際もより丁寧な作業が期待できるので、ブレーキキャリパーの洗浄はプロに依頼しましょう。