車のコーティングはボディ表面に作る被膜が塗装を保護するというもので、樹脂系やガラス系・セラミック系など様々な素材が用いられています。
特にガラス系やセラミック系ではコーティング層の硬度を売りにするものが多いのですが、数値の意味や他の物質との比較例がよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、硬度という観点からコーティングを掘り下げていきます。
カーコーティングで硬度が重要視される理由
カーコーティングの硬度を語る前に、なぜ硬度が注目されるのかを改めて説明します。
コーティングの果たす役割のひとつに、ボディを覆うコーティング被膜が表面を守るというものがあります。車のボディを保護するものとしては、従来は主に油脂系のワックスが使用されていましたが、柔らかい素材のためキズの防止性能はどうしても劣っていました。
コーティングの主流となったガラスコーティングや近年知名度を上げているセラミックコーティングは硬い被膜を形成するため、硬いほどキズがつきにくかったり変形しにくかったりという特徴があります。
コーティングの良し悪しを決める要素が様々ある中、比較的わかりやすい指標として硬度が重要視されているのです。
コーティングの9Hとはどのくらいの硬さなのか
物質の硬さを表す主な指標としてはモース硬度と鉛筆硬度があり、コーティングでは鉛筆硬度が一般的に使用されています。
鉛筆硬度は鉛筆の芯の硬さを目安にしたもので、コーティングの宣伝でよく言われる「9Hの硬度」も鉛筆硬度に由来します。
鉛筆の芯としては従来の「HB」や近年では「2B」が学校などで推奨されていますが、最も柔らかい6Bから17段階の硬さがあり、9Hはこの中でいちばん硬い芯です。つまり9Hの硬度というと、鉛筆でいう9Hの芯と同じくらいの硬さということになります。
ここで注意したいのは、「9Hより硬いものがない」というわけではないということです。9Hはあくまで鉛筆の芯で硬さを表したものなので、前述のモース硬度で見た場合はもっと硬いものが存在します。
この世で最も硬い物質としてダイヤモンドがよく知られていますが、モース硬度でいうと(単位なしの)10になります。鉛筆表記の9Hをモース硬度で表現すると5程度と言われているため、9Hだからといってガチガチに硬いわけではないことがわかります。
9Hのコーティングをした車でもキズはつく
鉛筆で最も硬い9H相当のコーティングを施工した車にはキズがつきにくくなりますが、全くキズがつかない・壊れないということではないことに注意しなければなりません。
最も硬い物質であるはずのダイヤモンドでさえ、ハンマーなどで叩けば簡単に割れてしまいます。そのため、硬度が高い物質でできたガラスコーティングやセラミックコーティングは、クラックも起こりやすいというデメリットがあります。
また塗装面に付着する鉄粉や砂利は、モース硬度でいうとコーティング剤よりも硬い物質です。そのため鉛筆硬度9Hのコーディング被膜を作っても、表面へのスクラッチ傷がどうしても避けられません。
コーティングの良し悪しは硬度だけではわからない
硬度の高いコーディングを施工すると、ボディへキズがつきにくくなるのはまぎれもない事実です。
しかしコーティング剤の硬度が9Hだとしても被膜が非常に薄いため、単純に塗りつけただけは十分な硬度を実現させることができません。実際9Hのコーティングを施工してすぐに洗車機にかけたところ、無数の小キズがついてしまったという事例も報告されています。
またベースの塗装膜はそこまでの硬度がなく、国産車では2H程度しかないとも言われています。柔らかい塗装にコーティング施工する場合は何回もコーティングを重ね塗りする必要がありますが、重ね塗りをするとクラックや剥がれの原因となるため高い施工技術を要します。
そのためガラスコーティング施工は、下地の塗装とコーティング剤の相性を見極めることも非常に重要です。硬度の高いコーティングは、キズが「つきにくくなる」だけであって、「絶対にキズがつかない」わけでないという点も十分に注意しなければなりません。
まとめ
ボディ表面を保護するコーティングの硬度は、車のボディへのキズのつきやすさを左右する大きな要素です。硬度が高いコーティングほど、キズはつきにくくなります。
しかし言い方を変えれば、保護の機能さえしっかりしていれば必ずしも硬い必要はないということでもあります。特についた洗車キズを復元するコーティングなど、硬度とはまた違った方向性を持つコーティングサービスを行う店舗も出てきています。
洗車やコーティング・塗装のプロフェッショナルであれば、塗装やボディの状態に最適なコーティング方法を提案してくれます。コーティングは施工技術や材料選びも重要なため、信頼できる専門家に依頼してみてはいかがでしょうか。